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執筆者の写真佐是 恒淳

『種痘の扉』第二章七節

 第二章七節「蝦夷松前」では、佐十郎が露語研修のため松前に派遣され、捕縛したゴロウニンからロシア語を習うことになります。

 日本はゴロウニン捕縛を機会に、先般起きた露寇の謝罪文をロシアの然るべき立場の者に書かせようとしました。ただ損害賠償させようという考えはなかったようです。それだけでなく、ロシアを隣国と認識し国境の画定交渉が必要なことを知りました。今でも通用する外交の基本だと思います。

 佐十郎にとって、ドゥーフから牛痘種痘のことを聞いたのが享和三年(1803)17歳のこと。ゴロウニンからロシア語を習うのは文化三年(1813)27歳のこと。ここで二回目の種痘との出会いがあります。10年たって、なお、佐十郎は種痘と不思議の縁があるのです。そのあたりは、次回となります。

























雪中紅梅

閲覧数:11回2件のコメント

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2 comentarios


北薗 洋藏
北薗 洋藏
11 feb 2023

佐是様、毎回楽しませていただいております。


ゴロウニンとの遣り取りを通じての佐十郎のロシア語理解が、ゴロウニン事件解決のみでなく、後の外交、洋学、医学、種痘に大きな影響を与えたことでしょう。次回以降、この事件の牛痘種痘への影響と展開が楽しみになりました。


数日前、岩波文庫「日本幽囚記」を読み終わり、ゴロウニン、リコルド、高田屋嘉兵衛の人間性、行動に感服した次第です。特にリコルドの高田屋嘉兵衛評が記憶に残ります。

残念ながら、訳注の日本側文書原文の候文は私では歯が立ちませんでした。

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佐是 恒淳
佐是 恒淳
11 feb 2023
Contestando a

北薗様

 ありがとうございました。「北槎聞略」に続き「日本幽囚記」をお読みになられたのですね。高田屋嘉兵衛は、世界に通用する堂々たる人物であったようで、私も感銘を受けました。高田屋嘉兵衛の苦労した前半生が優れた人間性と賢明さを彫琢してくれたようで、見事な人物です。江戸時代人らしい古格な日本人を見るような素晴らしい人物です。

 私は「菜の花の沖」を読んだことを思い出し、今も北前船には強い関心を持っています。昨晩はNHKの「新日本紀行」で取り上げられ、再び観ました。北前船が、いかに大きな経済活動であり、文化を育んだか、「江戸時代の日本もたいしたものだ」と豊かな気分になりました。

 余談になりますが、去る2月5日の日曜美術館では亜欧堂田善が取り上げられエッチング技法が紹介されていました。『新鐫総界全図』などの当時の最先端の地図も紹介されるかと観ていましたが、地図が紹介されることはなく、もっぱら風俗をえがいたエッチングと油絵の作品群でした。この番組は明日の午後八時から再放送されます。いずれにしても、江戸時代は鎖國中の閉じこもった詰まらぬ時代では全くなかったということだと思います。

 昨日は霏霏と雪降るなか、特別な時間を過ごしながら、この節を掲載できたことが印象的でした。余寒が続きます。ご自愛ください。

                               恒淳 

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