『種痘の扉』第二章一節は、佐十郎が江戸の天文方に勤務し始め、早速、熟達した蘭語力を発揮する場面から始まります。蝦夷でロシアの劫略を受け、幕府が危機感を覚えたためロシアを始め異国を調査する部署が新設され、馬場為八郎が任命されました。その為八郎が江戸から蝦夷へ出張調査の任につくため江戸に呼び寄せられたのが佐十郎でした。
天文方では、佐十郎がロシアの歴史、地誌を書いた蘭書を次々とあっという間に翻訳するのを見て所員一同、愕然とします。佐十郎は、本来の仕事のほか、蘭語の教授、ロシア語の研究にも従事します。佐十郎が蘭語教授に関わるようになって、日本蘭学界が飛躍的に力を付ける画期となりました。
私はオランダ語を知りませんが、『阿蘭陀通詞の研究』片桐一男著(吉川弘文館)を参考に、佐十郎の書いた蘭語教科書の概略を追いました。片桐先生の著作は600頁を超える大著ですが、実にていねいに佐十郎の足跡を追った章があって大変に参考になりました。
二節では、蝦夷にロシアの劫略を、長崎にイギリスの侵犯を受け危機感が高まる中、江戸で活躍する佐十郎が描かれます。幕府では、国難を乗り切るため異国を知る必要性が高まっていました。佐十郎はロシア語を学びながら、一方で蘭語教授を目指し忙しい日々を送ります。ロシアに勾留された経験をもつ大黒屋光太夫にロシア語を教わったのもこの頃です。
このネットを立ち上げ、初めての正月を迎えました。昨年中は『将軍家重の深謀-意次伝』の連載にあたり、いろいろご支援を賜りました。年末、年始は、なにくれとなく忙しくなりましたが、新春を迎え、気分を新たに、小説の掲載を続けてまいります。今年もお付き合いのほど、どうぞ宜しくお願い致します。
恒淳
冬の日比谷公園
佐是様、本年もよろしくお願い致します。
出島を中心に交易を限定できた平和な時代がそろそろ終わりそうな気配。
もう少し先の話でしょうが、ロシア、イギリスだけでなくアメリカ、フランス等々が圧力をかけてくるのでしょう。
大黒屋光太夫が「北槎聞略」でどういうことを語っているのか興味が湧きます。市販されているようなので読んでみようかと思います。難しすぎて、途中で投げ出しそうな気もしますが.....。