五節「ヴュルツブルグ」では、オランダがフランスから解放された後、東アジア、特に日本に通商立て直しの手を打ってくる経緯が描かれます。オランダ王ウィレム一世は大きな構想を抱き、それを遂行する人材を出島に送り込むためヨーロッパ各国から適切な医師を探すところから始めます。
ウィレム一世の構想は、日本をこれからの通商の柱に育てるため、世界市場に通用する特産品を見つけ出し、将来の開港に向けて日本の歴史、文化、政治など総合的に知って、取り込むことにありました。その任に当たるのが王の選考を経たドイツ人医師シーボルトでした。
日本ではシーボルト事件として知られることになりますが、大量の情報がオランダに流れました。複雑な経緯は『文政11年のスパイ合戦』秦新二著(文春文庫)を参考にしました。
オランダにおける日本研究はシーボルトの集めた膨大な資料によって格段に進みましたが、シーボルト事件によって壊滅的な終わりを迎えます。幕府はオランダとの交易を中止する措置まではとりませんでしたが、この事件以降、オランダはよほどおとなしくなり、大胆な情報収集活動は終わりました。
失意のうちに帰国するシーボルトは、牛痘苗を日本に持ち込んで、ついに成功しなかった蘭医の一人になります。
佐十郎亡き後、種痘をめぐる歴史は終わらず、図らずも牛痘苗の導入に関わることになった人々の活躍が続きます。
恒淳
佐是様、毎週ありがとうございます。
遂にシーボルト登場、期待と不安が入り混じったような気持ちになります。
高名で様々な業績を残したシーボルトでさえ牛痘種痘には失敗しているとは、成功までにはまだまだ遠い道のりのようです。
シーボルトが憧れたというフンボルトやバンクの業績について全く知識がありません、少しくらいは調べてみたいと思いました。
佐十郎亡き後、種痘成功までの紆余曲折を楽しんでいきたいと思います。