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執筆者の写真佐是 恒淳

『意次外伝』第一話「醜聞をいたぶる」三節 大名を腐す

 将軍家重には私生活の悪評がついて回ります。脳性麻痺を持って生まれ付いたため、いろいろ不都合があったようです。家重のあまり芳しくない私生活情報が、何故、どのように市井に漏れ出るのか、考えてみたのが、この「醜聞をいたぶる」です。


 宝暦年間なら、将軍を貶めたい、いやそれ以上に、側職の者を貶めたいという動機が譜代幕閣側にあるのではないかと考えました。市井であざけりの対象になっているのは、将軍や周りの側職には打撃になるのでしょう。城内で批判するネタになるかもしれません。

 延享以前、家重が将軍職につく以前なら、弟の田安宗武を推す一派にも動機があるかもしれません。一体、誰が、と考えても、正式な史料に書かれてあるはずはなく、まともな歴史家なら口を出さないテーマです。


 私は、将軍の小便話が馬場文耕の著作に書かれていることに着目し、この著作が宝暦年間のものであること、馬場の耳に届くはずのない話が届いていたのだから、幕府の奥に、情報源がいたであろうと想定しました。そこで考えたのが「醜聞をいたぶる」です。


 一種のミステリーを書くようで、史料の鎖から自由になって、想像力を働かせました。こうしたテーマなら、ほかに、家基の鷹狩り中の死、知保の方と懇意だった意次側室の前半生など、史料にあるはずのない話を創作することができます。私にとって、かなり難易度が高く、いまだ完成はおぼつきません。

                       恒淳      





















辛夷の実です。朝食前の散歩でみました。

春先、白い花を見ては、堀辰雄のエッセーを思い

浮かべるのが常ですが、秋にはうす紅の実を

付けます。

閲覧数:8回2件のコメント

댓글 2개


北薗 洋藏
北薗 洋藏
2023년 9월 17일

佐是様、今回は情報利用について考えさせられました。


将軍家重の周りに渦巻く勢力争い、土井家、本多家などが側用人政治に対して不利な情報操作を行おうとしているのでしょうか?

洪水の如く情報があふれている現在、ナチスのゲッベルスのような人間が現代社会にも多々存在しているのかもしれず、情報リテラシーの重要性を忘れてはならないと再認識させられました。


左馬次が反側用人勢力からの漏洩情報から、どう身を守っていくか、どういう道筋で結末を迎えるのか、最終回に期待しています。

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佐是 恒淳
佐是 恒淳
2023년 9월 18일
답글 상대:

北薗様、

現代でも、ある政治勢力が対立勢力を不利にするため、民間メディアを利用して情報をリークすることがあります。その情報が真実ならまだしも、フェイク情報や怪文書などまで考えると、かなり汚いやり方が、政治の世界では有効だと考えられています。メディアで叩かれる人や組織は、叩かれて当然なのか、それとも、別の黒い意図を持った対立勢力によってメディアが叩くように仕向けられているのか、見極めることが、北薗様のおっしゃる「情報リテラシー」だと思いました。正確な情報を持たない一般人は、見極めることがかなり難しいと実感します。


私は前から、メディアの実施する世論調査に疑念を抱いています。アンケート調査でなく世論調査だと謳う以上、限られたサンプル数(回答数)から、もし日本国民全員に聞いたとしたら得られるであろう結果を、統計学的推定幅を示したうえで、推計するのが本来の姿です。今の新聞社は、①誘導的な質問を、②十分でないサンプル数で、③信頼限界を示さず、例えば政権不支持率が何パーセントと公表し、政権攻撃を行います。しかも、固定電話で調査することが多く、日中在宅する人(多くは政治に無関心な老人かも?)の回答が多く集まるわけですから、サンプル集めからしてバイアスがかかっているわけです。出したい結果を出すために、質問文を工夫し(誘導質問)、サンプル集めも工夫すれば、望みの数字を出せるような調査(?)でしかありません。

岸田政権の支持率が3割台だと、報道では飛び交いますが、本当に日本国民の三割しか支持していないのだと思うのは早計だと、私は思っています。支持する人が3割になるよう回答を集めただけのものです。

世論調査の結果に信頼限界を表示したら、広すぎる幅になって、事実上、何も言えないのが実態だと思います。反政府の立場に立つメディアは、政府攻撃のネタに困れば世論調査を打つ、政府攻撃したネタの効果を知るために世論調査を打つ、しかも統計学的に正しくない方法論で。こんなところが日本の現実だと思います。メディアのいう世論調査は、公的にやっている「流言飛語」めいたところがあると思います。せめて「アンケート」と言うべきではないでしょうか。情報リテラシーの難しさです。


こんなことを思って、この小説を書いたわけではありませんが、ご指摘がぴったり共感できたので長くなりました。小説では、陰謀めいた情報操作こそが、ネタに成ります、松平定信が、田沼意次の死後に展開した意次悪者論が最近まで、日本史の教科書に採用されていたのですから、これはこれで、凄い話です。

                         恒淳      


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