将軍家重には私生活の悪評がついて回ります。脳性麻痺を持って生まれ付いたため、いろいろ不都合があったようです。家重のあまり芳しくない私生活情報が、何故、どのように市井に漏れ出るのか、考えてみたのが、この「醜聞をいたぶる」です。
宝暦年間なら、将軍を貶めたい、いやそれ以上に、側職の者を貶めたいという動機が譜代幕閣側にあるのではないかと考えました。市井であざけりの対象になっているのは、将軍や周りの側職には打撃になるのでしょう。城内で批判するネタになるかもしれません。
延享以前、家重が将軍職につく以前なら、弟の田安宗武を推す一派にも動機があるかもしれません。一体、誰が、と考えても、正式な史料に書かれてあるはずはなく、まともな歴史家なら口を出さないテーマです。
私は、将軍の小便話が馬場文耕の著作に書かれていることに着目し、この著作が宝暦年間のものであること、馬場の耳に届くはずのない話が届いていたのだから、幕府の奥に、情報源がいたであろうと想定しました。そこで考えたのが「醜聞をいたぶる」です。
一種のミステリーを書くようで、史料の鎖から自由になって、想像力を働かせました。こうしたテーマなら、ほかに、家基の鷹狩り中の死、知保の方と懇意だった意次側室の前半生など、史料にあるはずのない話を創作することができます。私にとって、かなり難易度が高く、いまだ完成はおぼつきません。
恒淳
辛夷の実です。朝食前の散歩でみました。
春先、白い花を見ては、堀辰雄のエッセーを思い
浮かべるのが常ですが、秋にはうす紅の実を
付けます。
佐是様、今回は情報利用について考えさせられました。
将軍家重の周りに渦巻く勢力争い、土井家、本多家などが側用人政治に対して不利な情報操作を行おうとしているのでしょうか?
洪水の如く情報があふれている現在、ナチスのゲッベルスのような人間が現代社会にも多々存在しているのかもしれず、情報リテラシーの重要性を忘れてはならないと再認識させられました。
左馬次が反側用人勢力からの漏洩情報から、どう身を守っていくか、どういう道筋で結末を迎えるのか、最終回に期待しています。