第三章二節「双葉より臭う」では、初めて一橋治済(はるさだ)が登場し、一橋家家老の田沼意誠(意次の弟)と世情を語る場面が描かれます。
話題になったのは、この年、発行された真鍮四文銭です。庶民の経済活動を活発化させるために、少額貨幣が重要だと川井次郎兵衛久敬は常々、言っていました。この通貨によって、世間の価格設定まで変わることになります。この通貨は、前々回のブログで写真をお見せしました。裏面の波の意匠、青海波のデザインが特徴です。
将軍世継ぎを出す御三卿家とは、将軍に嫡男が授かりさえすれば、ほとんど存在価値がなく、諸藩に養子を出すだけの家です。治済は一橋家当主になって養子に出る不安から解放されました。御三卿家の一つ一橋家に育ったため、幕閣の意向に敏感で、家を守りたいという気持ちが強い青年です。治済は若いながら喰えない男に成長し、謀略にみちた生涯を送ります。田安家に生まれた定信は養子にだされ、苦悩に遭遇します。どちらも、側衆を嫌うことでは共通します。
小説の後半では、意次の経済政策の進展とともに御三卿家の関りが重要になってきます。
通貨流通が当然の世の中に生活しているので、五匁銀、四文銭の浸透効果には考えが及びませんでした。少額貨幣の利便性の流通・経済への活性化効果に納得です。
日光参詣反対派の松平武元、暗躍しそうな一橋治済の動きが気になります。御三卿家の将軍跡目争いも絡んでくるのでしょうか、思わず次の将軍家斉の出自も調べてしまいました...次回以降、興味津々です。