『四本の歩跡』
目次へ
幕末は戦国時代と並んで、歴史小説の多く書かれた時代で、素晴らしい傑作が発表されています。この時代はたくさんの人物が綺羅星の如く個性を発揮し、史的に正確な枠組みにおいて小説にふさわしいキャラクターが躍動しています。
幕末は、嘉永六年(1853)ペリー来航から明治元年(1868)明治政府成立の期間をとってみても、わずか16年。この短期間に多くの変化が起こり、徳川幕府が倒れ侍身分が存在意義をなくし、日本社会がドラスティックに変貌しました。
こんな時代の政治史を主眼に据え、菲才ながら、視点を変えて描く幕末史小説を試みました。視点となる4人の人物は、松平容保(会津藩主)、小笠原長行(唐津藩世子、老中格)、三条実美(國事御用掛)、姉小路公知(摂海防備巡察)です。幕府側では、容保の格段に高い身分で京都守護職の激職につく立場、長行の数奇な青年時代から一躍、幕閣に抜擢され、実務のできる老中としてイギリス公使と外交交渉の主担当になった立場では、その立ち向かった困難の質が異なります。朝廷側の実美も公知も過激な攘夷論者ですが、倒幕しどんな政治を目指すか、異なっていました。
時代は文久二年(1862)、京都で天誅騒ぎのテロリズムが激しく横行するなか、朝廷と幕府の意思疎通を円滑に立て直し、和宮の将軍家輿入れによる公武一和の実を上げようと京都守護職が新設されるころから物語が始まります。朝廷では、幕府に攘夷を実行させようと、勅使を二回にわたって江戸に派遣するころの物語です。700枚程度の長編となりました。どうぞ、ご愛読賜れば幸いです。
目 次
第一章 楓の記憶-容保
一 一樹色づく・・・・・・・・・・・よむ
二 紅葉を散らす・・・・・・・・・・よむ
三 荼枳尼天の祝福・・・・・・・・・よむ
四 永別の家譜・・・・・・・・・・・よむ
五 新たな芽吹き・・・・・・・・・・よむ
六 磐根の亀裂・・・・・・・・・・・よむ
七 公武の根本・・・・・・・・・・・よむ
八 知らぬが亡鬼・・・・・・・・・・よむ
九 新雪を染める・・・・・・・・・・よむ
十 自慢の臣・・・・・・・・・・・・よむ
十一 あと継ぐ者たち・・・・・・・・・よむ
十二 徒手空拳の壮図・・・・・・・・・よむ
十三 玉玲瓏・・・・・・・・・・・・・よむ
十四 護る者と破る者・・・・・・・・・よむ
十五 果てなき道へ・・・・・・・・・・よむ
第二章 重藤の弓-長行
一 未来に射る矢・・・・・・・・・・よむ
二 数奇なり・・・・・・・・・・・・よむ
三 具眼の士たち・・・・・・・・・・よむ
四 花陰に香る・・・・・・・・・・・よむ
五 目利きの一喝・・・・・・・・・・よむ
六 大獄の余波・・・・・・・・・・・よむ
七 月に乾す杯・・・・・・・・・・・よむ
八 度胸と怯懦と・・・・・・・・・・よむ
九 攘夷なる妄説・・・・・・・・・・よむ
十 焦土と化すも・・・・・・・・・・よむ
十一 足元に響く音・・・・・・・・・・よむ
十二 冬の海にて・・・・・・・・・・・よむ
十三 十万ポンドの斬撃・・・・・・・・よむ
十四 茅渟の海・・・・・・・・・・・・よむ
十五 沖つ潮風・・・・・・・・・・・・よむ
第三章 貧の遺恨-実美
一 生還せざる者・・・・・・・・・・よむ
二 天津日を還す・・・・・・・・・・よむ
三 狂気と熱誠・・・・・・・・・・・よむ
四 雨夜に斬る・・・・・・・・・・・よむ
五 愛妓の侠気・・・・・・・・・・・よむ
六 犬猿の友好・・・・・・・・・・・よむ
七 どか貧の偉物・・・・・・・・・・よむ
八 細き紅糸・・・・・・・・・・・・よむ
九 亡国を目指す・・・・・・・・・・よむ
十 謀略の系譜・・・・・・・・・・・よむ
十一 愚者と弱者・・・・・・・・・・・よむ
十二 理に非ざる理・・・・・・・・・・よむ
十三 嵎を負う虎・・・・・・・・・・・よむ
十四 ならぬことは・・・・・・・・・・よむ
十五 成敗を問わず・・・・・・・・・・よむ
第四章 名残のほととぎす―公知
一 放埓青公家・・・・・・・・・・・よむ
二 惰眠の目覚め・・・・・・・・・・よむ
三 混迷に咲く花・・・・・・・・・・よむ
四 薩摩の血気・・・・・・・・・・・よむ
五 鬼才の術策・・・・・・・・・・・よむ
六 殺意の交錯・・・・・・・・・・・よむ
七 月明に斬らる・・・・・・・・・・よむ
八 謀略の闇・・・・・・・・・・・・よむ
九 意地を貫く・・・・・・・・・・・よむ
十 杜鵑の啼き音・・・・・・・・・・よむ
十一 馬関の潮路・・・・・・・・・・・よむ
十二 錦江湾砲撃戦・・・・・・・・・・よむ
十三 薩南の機略・・・・・・・・・・・よむ
十四 天覧に供す・・・・・・・・・・・よむ
十五 八月十八日夜雨・・・・・・・・・
参考資料・・・・・・・・・・・・・よむ
略年表・・・・・・・・・・・・・・みる